コラム

PlusOne研修で活躍中の講師に迫る!|伊熊昭等講師

伊熊講師

現在、どんな研修を担当していますか?

現在は以下のような研修を担当しております。
プロジェクト・マネジャー(PM)育成研修(初心者~上級者)、全業種対応可能なPM研修、ITIL運用関連講座、開発手法(ニーズ分析、要件定義マネジメント)、PMP資格取得対策講座、情報処理(IPA-PM資格取得)、PM向け人間関係のスキル研修、PMOの構築・運用、リスク・マネジメント、品質マネジメント、品質・信頼性講座、ITLL関連、ロジカル・シンキング、シニア世代向けセカンド・キャリア・マネジメント研修、再就職支援研修

講師になるまでの経歴を教えてください。

大学卒業後、(株)日立製作所に新卒入社し、オーディオ部門にてハイファイスピーカーシステムの製品開発・設計に従事していました。1981年には世界初のCDプレーヤー製品化開発プロジェクトに携わり、キー・デバイスである二次元対物レンズ駆動装置を開発。1991年から業務用大型映像システム、1998年からは情報システムのSEとして従事したのち、PMO(プロジェクトマネジメント・オフィス)にて、大規模プロジェクト支援業務とプロジェクト・マネジャー育成に携わることになりました。

2004年にはグループの研修専門会社(株)日立インフォメーションアカデミーに転籍。そこでは物造り系とIT系での豊富なプロジェクト実務経験とPMOでの実績を活かし、PM講座のインストラクタ・スペシャリストとして約8年間従事しました。2011年から(株)マネジメント社の取締役に就任し、2013年に独立して現在に至ります。

なぜ、企業研修の講師になろうと考えたのでしょうか?

ちょうどPMOに在籍していた頃、グループの研修専門会社に管理職として異動したのですが、当初は「講師になろう」とはまったく考えていませんでしたね。物づくりの開発設計エンジニアやSEから見ると、講師という仕事は明らかに「畑違い」だったからです。それまでは講座を受けている側だったのに、それが突然逆の立場になるわけですから、果たして私に講師が務まるのだろうか、と甚だ疑問でした。そこで私に任されたのは、管理職としてPM関連研修ビジネスの企画・立案・実施をマネジメントすること。当時あと7年で定年を迎えるというタイミングでしたし、そのまま平穏に過ごしても良かったわけです。

ところが、異動後に社内管理職の業務スタイルを観察してみると、ある特徴に気づきました。スキルが高く、第一線で活躍している講師というのは、だいたい主任クラス。ところが、どんなにスキルの高い講師でも管理職になってしまえば現役を引退し、完全にマネジメントに専念していたのですね。そんな状態を見て、自分自身のセカンドキャリアについて考えさせられたのです。自分には一体何ができるのかを自問自答したり、SWOTによる自己分析を行ったりもしました。その結果、導き出された最善策は「世の中に通用する講師スキルを習得すること」。そこで自分自身のキャリア・マネジメント、つまり定年までの7年間計画を立案したのです。

一方で社内的な事情として、当時のPM関連研修ビジネスが低迷状態にあったため、集客力が望める新しい研修を企画することで事業拡大を行う必要がありました。私は自分自身のキャリア計画を踏まえたうえで上司に進言し、マネジメントも講師業務も行うプレイング・マネジャーというスタイルでやっていく覚悟を決めたのです。

講師の仕事では、どんなところに苦労しましたか?

やはり一番の苦労は、講師としてのスキルを習得することでした。それまでのキャリアにおいて、もちろん自らが開発した製品のプレゼンテーションやシステム内容の説明などは何度も経験していたものの、講師となるとまったくの別物。

というわけで、まずはPMI日本支部のPM講座委員会に所属し、ボランティア活動を行いながら優秀な講師と交流することにしました。さらに会社でスキルが高いと感じた講師の講座を受けたり、その講師にスキルアップの秘訣を教えてもらったりもしていました。とある講師のアドバイスで、話し方の“間”を理解するために落語を聴きに行ったこともありましたね(笑)。そもそも大分県出身の私にとっては、訛りを改善するのが意外と難しかったのです。自分の声を録音するなどして、イントネーションや話し方の“間”について課題を洗い出し、少しずつ改善していきました。

そのような形で講師になるための勉強を続けていた一方、主たる業務(PM研修ビジネス拡大)のほうでも「PMP資格取得対策講座」を新たに企画しその講師を担当することになりました。最初は半日コースの講師から始め、回を追うごとに自信をつけながら2年ほどで4~5日間コースを任せてもらえるようになりました。

どんなところに講師の「やりがい」を感じますか?

PMP資格取得対策講座受講者で、合格された方からお礼のメールを頂いたときですね。私自身、50歳近くでPMP資格を取得したのですが、幸運にも1回で合格できたものの、かなりの苦戦を強いられた経験があったため、受験勉強の大変さは痛いほど理解しています。

そのため、受験勉強の不安をなるべく軽減できるように心がけるとともに、残念ながら初回の試験で合格できなかった方への丁寧なアドバイスやフォローを絶対に欠かしません。合格へ向けて一緒にがんばってきた方から合格の知らせをいただくと、「お役に立てた」という安堵感と“やりがい”を感じます。

講師に必要な資質は何だと考えますか?

講師に必要な資質には3つあると思います。1つ目は「研修テキストの行間を埋め、実務に役立つ研修を目指すこと」です。いわゆるPM用語は非常に難解で、正直なところ研修テキストを一読するだけでは理解できない受講生も多いと思います。日頃から使っている易しい言葉に置き換えたり、講師の経験や事例を交えて説明したりすることで、受講生に理解しやすい研修を行える能力が大切です。

2つ目は、「受講生の満足度を向上させるために努力すること」です。「上から目線」の研修ではなく、受講生が気軽に質問できるような環境づくりに努めるなど、受講生の目線に合わせたきめ細かい配慮が必要です。私自身の経験でいうと、キャリア・カウンセラーの国家資格を取得したことで「傾聴」「共感」「受容」を学び、研修に活かせていると感じます。

3つ目は、「新技術に対する好奇心を持ち、その習得に努めること」です。近年、IT技術の進歩はめざましいため、その分野に携わる人材を育てるためには、講師も既存の知識だけでは通用しません。自分が担当する研修内容には直接関わらないとしても、最新技術には常に関心を持ち、関連書籍や展示会などで情報収集に努めることはとても重要な取り組みです。

これから講師を目指す人へメッセージをお願いします。

話し上手な講師というのは、世の中にたくさんいます。ですが、研修テキストに書いてある上っ面の知識を伝えるだけでは、本当の意味で受講生には響かないと思います。講師としてプロフェッショナルを目指すのであれば、習得した知識と自分自身の経験に基づいた独自の講義スタイルを確立することが必要です。小手先のテクニックよりも、自分の経験を伝えたいという熱意や情熱こそが、もっとも重要なのです。

私自身、初めから講師としての特別な研鑽を積んでいたわけではありません。最初は見よう見まねでも構わないので、優れた講師たちから多くを学びながら、自分のスタイルに取り入れていくことをおすすめします。