コラム

「会社と個人の関係を再定義する時代」その1

「会社と個人の関係を再定義する時代」その1

前回までのコラムで2つのエピソードを書きました。
この2つのエピソードを通して、私自身は共生していく組織というイメージと、
問題解決力を持つ組織が個人の人生を助けていくんだ、というイメージを
持ちました。
そして今はさらに、
共生していく組織と個人
問題解決力のある組織と個人
を作っていく支援をすることが重要なのではないかと思っています。

今度はこれからの社会や組織について書いてみたいと思います。
コロナショックを通して様々な変化が社会・組織・個人と起きていますが、
そのうちの一つに「働き方」ということが挙げられます。
この「働き方」「働かせ方」ということは実は随分前から組織テーマの一つでした。
私には5年くらい前から企業からの「キャリア研修」の依頼が多くなってきました。
これは単純に私がキャリア研修をやる人だ、という認知が営業の方に広まったということもあると
思いますが、それを踏まえてもキャリア研修の依頼や提案したいという話はだいぶ増えました。

コロナショックにより今までゆっくり起きていた変化が急激に大きく、不可逆的に起きています。
ワクチンが出来ることや社会的許容度が高まることで、コロナショックはインフルエンザと同様の
警戒レベルに遅かれ早かれ落ち着いてきます。
しかしながら、コロナショックが落ち着いていったとしても、この変化が元に戻ることはなく、
テレワークを実施するしないといった問題ではない変化が起きており、それは元には戻らないと思います。

日経ビジネスなどの記事でもメンバーシップ型からジョブ型へといった内容があります。
この変化をただの制度変更という見方をしてしまうと対処を誤ります。
この変化は制度変更だけの変化ではなく、会社と個人の関係を再定義する変化なのです。
メンバーシップ型雇用を年功序列や終身雇用という言葉ではなく、会社と個人の関係という枠で
表現してみると、会社による人生丸抱えをする安心感の提供と、個人による会社のために滅私奉公する
貢献の提供の契約でした。
個人の人生には色々なことが起き、浮き沈みが存在します。新卒は経験や知識が足りない状態が存在し、
また個人の家庭環境の中で頑張れる時期とそうでない時期も存在しています。
そういった人生の浮き沈みを組織に所属するメンバー全員で支えあい、関わり合いながら乗り越えていきます。
たとえば「ちょっとAさんはご家庭の事情があって残業できない状況があるんだ。Bさんフォローしてやってくれないか?」
などの言葉が上司から出る時があります。
また人事異動の際にも「Cさんはあと少しこいう経験すると能力がグッと上がるんじゃないかと思うんだよね。
今度の異動はCさんにここで頑張ってもらおう」などの会話を人事の方がしていることがあります。
これは会社という組織が個人の人生の心配をし、個人の成長を促す仕掛けを考えているわけです。
色々なことがあり浮き沈みのある人生を支えていくことを組織が提供しているのです。
それに対して個人としては、望まない異動もあれば望まない仕事もありながらも、組織が色々考えているんだ、
という信頼を元に異動などの指示にしたがっていくのです。

これには問題もあれば良い点もあります。
私はこういった組織だったからこそキャリアが救われた1人ですので、
とても感謝していますし、良い点を数多くあげることができます。

良い点があるとしても、この形を組織は今後とっていくことはできません。
個人の人生を丸抱えすることを組織が担えなくなってきています。
これからジョブ型へ移行していく企業は増えます。
そうでない企業も丸抱えはできなくなっていきます。
同時に丸抱えできないということは、今までの個人への価値提供はできないということです。
個人への提供能力が減っているのに、個人からの貢献は今まで通り期待するということが
可能でしょうか。
人生を丸抱えしてきた、ある意味ギュッと一心同体の関係だった組織と個人が、
ちょっと距離をおいていくことになっていきます。
この時、組織と個人の再定義が発生していくのです。

今日はここまでにします。
またこの続きは次回に。
ここまでお読みいただきありがとうございます。